今回は、少しランドスケープから離れて、「デザイナーと英語」ということについて書いてみることにします。
なぜ、このような話題を書くのか?
それは、これから日本国内における建築関係の需要が少なくなる、しかし、海外には、設計を必要とする人達が多くあり、そこにデザインというサービスをしていく事が重要であると私は考えはじめました。この事実と傾向を踏まえると、コミュニケーションツールとしての英語は、デザイナーにとって、とても重要であると思うようになりました。もちろん、10数年の昔は、日本語だけ話せれば十分であったことは間違いないでしょう。しかし、高度経済成長期において職に就いていなかった私達の世代は、これから、10年、20年、30年という期間の将来を考えると、英語というツールの必須になっていく事は間違いないと思っています。
いつの間にか、私は米国でランドスケープアーキテクトの仕事を就いてから、5年以上の年月が過ぎ、留学も含めると約8年近くになります。仕事でも通常は、英語ですし、米国以外の海外のクライアントやコンサルタントの人達とやり取りすることも日常の一部となっています。しかし、私自身が英語が流暢でペラペラなのか?と客観的に見ると、「なかなか、そうではない。」というのが正直なところです。もちろん通常の生活や仕事には、支障が無いのですが、デザインと言う技術だけでなく、マネージメントしたり、チームを引っ張っていく中堅的な立場な自分を考えると、どうしても「コミュニケーション」としての英語を洗練させる必要があると考えるようになりました。これは、長い目で、将来を考えた上です。
数年前に、ルームメイトや友人から、「私の英語のアクセントをもう少し見直してみてはどうか?」と言われたことがありました。個人的には米国にいるし、それほど困ってはいなかったので、この助言は、パーソナルに捉えてしまい、口論になりかけました。喋るという普段の癖になってしまっているものが、本当に直るのだろうか?というチャレンジに対して自分は、かなり消極的だったのが本音です。そのまま、一、二年ほど何もしないでいました。発音を良くするという名前の本を買って、その付属のCDを聞いたりしたのが、その間の勉強方法でした。結局、その間は、特に、英語が上手くなるということも、あまりありませんでした。
本格的に英語の勉強をし始めたのが、一年半前のことです。きっかけは、米国へ来て以来、初めて両親が来たことでした。実は言うと、私の父は、高校の英語の教師です。その父が、「お前の英語は、どうにかしたほうが良いのじゃないのか?」と言われたのです。そこで、また口論になりかけました。。。はたして、自分の英語の何がいけないのか?それが全く分らなかったのです。実は、父に比べれば、英語圏にいた期間は、私のほうが長いのです。。。もしかしたら、米国の大学には、直接、英語の集中講座のようなESL(English as Second Language)に行かなかったことが原因なのだろうか?などと、いろいろと考えました。
最近、この得意ではない英語に対しての突破口を開いた、と個人的に思っています。少しづつですが、確実に前進していることは間違いないと実感しはじめました。
この英語の勉強方法が、個人チューター(家庭教師)を雇って教わるというものでした。偶然、Craig’s Listのウェブサイトを通して、以前にESL(English as Second Language)で教えていた先生を見つけることができました。その方と、週に一回、スターバックスで英語を勉強しています。
最初は、発音を中心に勉強しました。これは、聞きにくい言葉があると止めてもらい、どこが分らないのか教えてもらうことにしました。例えば、Vの発音がBに近かったり、THの発音がきっちり出ていない等、注意してもらうことでした。習っていたときは、チューターの方に言われて、直るものもありましたが、なかなか難しいものもありました。その時に、助けになったのが父の存在でした。父からは、日本的な解釈や、日本人の癖を踏まえた上で、基礎的な発音を習いました。父から何か具体的なことを教わるのは、今回が初めての経験でした。
もし、電話で話すときに、英語が相手に通じないという事があるようでしたら、日本人の発音を教えることが出来る先生に習うという方法が一番効果的なのではないかと、思っています。そして、それを試してみるのに、英語圏の人と話すのが良いと思っています。
また、ライティングを見直しました。ビジネス形式のライティングは、少し型が違いますし、フォーマルなライティングを書けるというのも重要です。実際、Emailで依頼者やコンサルタントの方とやり取りは多いので、その文章において意味がきちんと通じているか、さらに、前置詞などといった文法的なものも見てもらうこともできます。書くことを通してボキャブラリーが増えますので、日常の英語にも表現が豊かになると思います。このライティングについては、英語圏の人に教わるというのは良いと思っています。
小さい頃、何か専門的なことと英語ができれば、良い仕事をできると聞いたことがあります。これは、間違いないのかもしれません。ヨーロッパの国の人々は、英語を気軽に使いビジネスをしていますので、日本もそのようになるのが、当たり前になる世の中が来るのに、数十年もかからないかもしれないと私は思っています。
最後に、個人的にお勧めな英語関係の書籍や辞書を下に紹介しておきます。
最近、中国のプロジェクトに関わっているので、中国語、英語、両方が出来る電子辞書に、先月、買い換えました。カラーの画面は始めてですが、とても使い易いですし、多くの辞書が入っているのも気に入っています。Toeicの対策などの本も入っています。
とても英語の初歩的な言葉がよくまとまっていると思います。チューターに紹介された本の一つです。教室、お店などと言った場面場面に分かれていて、面白く英語の単語力を増やすことができます。簡単なものですが、馬鹿には出来ない一冊です。
私の電子辞書に入っている本の一冊です。今までに、発音ということを習った記憶がない人は、フォニックスを中心とした母音や子音を抑えておく必要があります。私の場合は、学校や塾、さらにはNOVA等の英会話教室では、今まで発音、特にフォニックスは習ったことがありませんでした。これを抑えおいて、留学すれば、もっと、英語が上手くなっただろうと思います。発音が出来ると、リスニングも良くなると思いますよ♪
※英語では、私は結構苦労しているほうなので、何かあれば、皆さん、これを機会に気軽にコメントしてみてください。
はじめまして。
東京造形大学4年の浅野尚子と申します。今年の春に卒業を迎えるわけですが、私はアメリカでランドスケープアーキテクトを本格的に学びたいためアメリカの大学院への入学を目指しております。本当は昨年の冬に願書を出す予定でしたが、やはり金銭面的な問題や、TOEFL等の準備が整わなかったため、今は正に前向きなプータローです。文化庁が出している奨学金等をとってから渡米したいと考えておりました。
私の場合は、大学でサステナブルプロジェクトという学科を専攻し、主に環境問題や様々な問題をデザインでどの様に解決して行くべきかを学んできました。自分の将来について大学時代以前から真剣に考えていたのですが、北欧を旅した時に訪れたE.Gunnar Asplund設計の森の墓地(Woodland Crematory)との出会いがきっかけでLandscape Architectの仕事へ強い興味を持ち、進路を考える様になりました。ランドスケープアーキテクトの上山良子先生とお会いする機会を頂、様々な助言を頂いた結果アメリカ留学を決意した次第です。
私の周りにはアメリカ留学をされた方や、相談ができる方がいなかったため田口さんのブログを拝見してとても参考になりました。本当に心から感謝をしております。
先日、オンサイト計画設計事務所にてオープンデスクをさせて頂、そこでも色々とアドバイスを頂きました。その中で、アメリカ留学をする場合は、まずは教授を良く調べて、その教授に付きたいという理由で大学院を選んだ方が良いという助言を下さいました。ただ、私としては、有名な教授が必ずしも教え方が上手いとも限らないと考えております。また、私はBiomimicryにも興味を持ち、自分なりに研究をしている所ですが、生物学や生態学的な側面をランドスケープと結びつけてデザインを試みたいを思っています。田口さんは現在アメリカの事務所で仕事をされているとのことですが、同じ業界にいて、実際に今は何処の教授が良いのかや、生態学や生物学にも精通して活動されているランドスケープアーキテクトがいらっしゃるのかをご存知でしたら是非教えて頂きたいと思います。
また、今年は家の近所にて小遣いを稼ぐ程度のバイトをしながら語学に集中するべきか、ランドスケープ事務所か建築事務所でアルバイトをさせて頂きながら来年の留学を目指すかで選択を考えている所です。実際、私の場合はCADや3D等のコンピューター技術がないため、今年はそれらの勉強もしながらになると思います。ただ、事務所のアルバイトはたいていの場合深夜まで続き、語学に集中するという本来の主旨からずれるのではないかという懸念があります。ただ、その現場にいることで実際の実務的な場を直接見ることが出来るので、どちらを選択するべきなのか田口さんの助言を頂ければ幸いです。
本当にお忙しい日々を過ごされているかとは存じますが、返信をお待ちしております。
よろしくお願い致します。
東京造形大学4年
浅野 尚子
浅野 尚子 さま
コメントをどうも有難うございます。私もスウェーデンのも森の墓地には行ったことがありますよ。シンプルなのだけど、なぜか絵になるような景色の墓地はいいですよね。
浅野さまの「前向きのプータロー」と言う言葉は、私も大学の後輩から、そう呼ばれて時期がありました。。。そして、浅野さまと同様に英語を勉強したら良いのか?事務所で働いたら良いのか?悩んだ時期がありました。私のコメントは一意見として受け止め、最終的な判断は、個々の事情によりますから、浅野さん自身がする、という前提でコメントを読んでもらえたらと思います。
1.アメリカの大学は、私の知る限りでは、日本の大学のような一対一形式で、一人の先生の下で指導を頂くというような学び方はしないと思います。大学院であれば、ほとんどの授業が10人前後の小さなクラスでしょうから、そこから多くのことが学べると思います。私の場合は、多くの先生から、個々が得意とする分野を学びました。そこで、特に、誰かの先生を探すというのは、あまりしなくても良いのではないでしょうか?むしろ、ランドスケープ学科に多くの教授陣がいて、全体的にバランスが取れている大学のほうが、ランドスケープをこれから学んでいく人にとっては、良いのではないでしょうか?良い学校を探すには、大学のランドスケープ学科のランクも参考になると思います。
2.Biomimicryは、ここ数年、建築家たちの間で流行っている合言葉ですね。より建築やハードのものを、環境や自然に近づけることにより、エコロジカルなものをつくりだす、ということで私は理解しています。ランドスケープの場合は、もともと自然である環境を扱っているので、特に「これがBiomimicryだ。」と言われるようなものは、あまり無いような気がします。しかし、私たちの仕事は大型インフラや、都市計画、環境計画といった大規模計画に携わることがあるので、その際に、いかに環境の負担を減らすことができるか、更には、ライフサイクルコストの効率を上げるか?など、考える必要がありますね。ランドスケープに特化した本ではありませんが、↓の本は有名ですので、時間がある時に読んでみるといいかもしれませんね。
Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things
3.語学に集中するべきか?事務所で技術を身につけるか?との質問ですが、私はまず、米国留学に必要な最低限のTOEFLとGREのスコアをとる、これに集中するべきだと思います。米国の大学院に留学すれば、初歩的なことは、いろいろと教えてくれるので心配しなくて良いでしょう。これが取れた後に、事務所やバイトを考えたほうが良いと思います。深夜まで働きつつ、語学の勉強というのは、相当難しいと思います。身体は一つしかありませんので、あまり無理しないほうが良いでしょう。実務的なことを学ぶ機会は、将来、いくらでも時間があるから、何も焦る必要は無いでしょう。私も後輩やブログを通してアドバイスしていますが、一番TOEFLのスコアを取るというのが、日本人が留学を目指す際の壁になりやすいようです。思い切ってこの手を専門に扱う塾や予備校などに短期的に通うのも効果があると思います。私も含めて、こちらに来ている海外の留学生たちも、自分の国で、TOEFL対策をする学校に通ったと言っていました。
少し長くなりましたが、また何か質問があれば気軽に連絡ください。浅野さまの明るいポジティブな将来とご活躍を期待しています。
田口 真弘さま
早々に返信を頂きありがとうございます!!
田口さんは私に取って大先輩ですので、本当にアドバイスの数々が参考になります。感謝致します!
今の所、自宅にてパソコンを使用しながら語学を学んでおります。TED, ABC news, Youtube,その他のオンラインを使用しながら繰り返しの音読や、まさに自己流とでもいうような方法で毎日励んでおります。ただ、実際の願書提出までは1年もないわけなので、限られた時間のなかで入学への近道を探らなければならないと思っております。
結局、事務所のアルバイトではなく、地元鎌倉に出来たパン屋さんで早朝の5時〜11時までパンを作るアルバイトを週に3~4回働くことにしました。昼前には帰宅できるので、TOEFL,GREに集中するつもりです。
田口さんのアドバイスの通り、自己流で語学を学ぶことの難しさを感じているので、TOEFLのスクールに通うことも検討しようかと思います。様々なスクールがあるようなので、何処がふさわしいのか自分の目と心で確かめながら、決めたいと思います!
あともう一つ、お聞きしたい事があります。ランドスケープの現場では仕事の中でCGをプレゼンテーションやデザインを行う上で活用し、求められているかどうかを知りたいと思います。CGといっても様々なソフトがあると思うのですが、アメリカで主にどのようなソフトが主流なのかも併せて教えて頂けると有り難いです。
余談になりますが、私の両親も教師をしております。両親は離婚をしておりますが、母は音楽を、父は数学の教師です!
田口さんにはご縁を感じますし、本当にこのブログに出会えたことにも感謝しております☆
お忙しい中親身な返答に感激しました。私も田口さんのご活躍を励みに毎日の生活を充実させながら、夢に向かって進みたいと思います♪
東京造形大学4年
浅野 尚子
浅野 さま
少しでも参考になったようで、良かったです。語学は、少しづつ学んでいくものでしょうから、コツコツ取り組むのが良いでしょうね。ちなみに、私は、一、二期間(確か三ヶ月から半年?)ほど、トフルゼミナールの横浜校に通いました。http://tofl.jp/
さて、CGのプレゼンテーションですが、米国では、アドビのPhotoshop, Illustrator, InDesign、また、AutoCADが使えると良いと思います。また、3Dでは、スタディモデルを作るのにSketchUpを使えると良いでしょう。それに付け加えて、3DMax, Rhinocerosあたりでしょうか。。。コンピューターは、留学している際に使えるようになると思いますので、あまり今から心配する必要はないでしょう。
お互いに教師を両親にもつということで、何かの縁かもしれませんね。また何かあればお気軽に連絡して下さい。
きっと留学は楽しいですよ。
田口 真弘